第12回 日本生殖心理カウンセリング学会 学術集会 開催報告
2015年2月25日、第12回日本生殖心理カウンセリング学会学術集会を長崎ブリックホール・国際会議場に於いて開催致しました。学術集会の大会長は不肖、岡本 純英 ( ART岡本ウーマンズクリニック 理事長 ) が務めました。西の果て、長崎での開催にも関わらず253名の方に御参加頂きました。会員の皆様およびサポート下さいました皆様に大会長として心より御礼申し上げます。
今日、進歩著しい不妊治療・生殖医療は第二の生殖革命とまで云われています。不妊に関わるいわゆる「心のケアー」につきましても、より高い専門性が求められています。今回の学術集会では「なぜ今カウンセリングが必要なのか ? 」と題して、生殖医療の様々な分野からこれからの「心のケアー」の有り方につきまして様々な角度よりご検討をいただくプログラムを企画しました。
教育セミナーシリーズでは、まず平山 史朗 先生 ( 東京HARTクリニック 臨床心理士 ) から「カウンセリングルームで起こっていること」と題して御講演いただきました。続いて、京野 廣一 先生 ( 京野ARTクリニック院長 ) には「ARTにおける「血栓症」への対応」について御講演いただきました。
招請講演は、大会長のオーストラリア留学時代の恩師、モナシュ大学の Gabor T. Kovacs 教授に「Child development, Parenting, Family development and Counseling」と題して、世界に先駆けて実施された非配偶者間生殖医療の展開についてご講演いただきました。オーストラリアを始め世界で行われている最新の研究結果をご紹介頂き、出自を知る権利、告知について深く考えることの出来る講演となりました。座長の高橋 克彦 先生 ( 広島ハートクリニック 顧問 ) には本邦の非配偶者間生殖医療と比較した総括的コメントを頂きました。
ランチョンセミナー ( フェリング・ファーマ共催 ) では大野 真司 先生 ( 国立病院機構九州がんセンター 臨床研究センター長 ) に「妊娠を希望するがん患者の現状と心理」についてご講演いただきました。まさに今、本学会は日本がん・生殖医療研究会と連携しての、がん患者の心理サポートシステム構築に取り組んでおり、今後はこの分野に関わるスタッフの教育も重要なってまいります。特別講演では平木 典子 先生 ( IPI統合的心理療法研究所 ) より「子どもが生まれることの心理的意味」と題してご講演頂きました。日々の診療の中に医療者として、夫婦および、子どもとの家族の関係についてまで思いを巡らす大切さを再認識致しました。本大会のテーマでもある「なぜ今カウンセリングが必要なのか ? 」についてシンポジウムでは、様々な分野で活躍されている生殖医療心理カウンセラー・相談士の先生にお話し頂きました。小倉 智子 先生 ( NPO法人 Fine ) には不妊治療の現場での心理士の立場から、奈良 和子 先生 ( 亀田総合病院 ) にはがんと生殖医療に携わる心理士の立場から、上野 桂子 先生 ( 大分県不妊相談センター ) には非配偶者間生殖医療に携わる心理士の立場から、愛甲 恵利子 先生 ( IVF詠田クリニック ) には相談士として看護業務を行う立場から御発言頂き、御経験を交えて活発な討論が行われました。
今回の一般演題は口頭発表が7題、ポスター発表が12題でした。今年は幸いにして広いラウンジをポスター会場に御用意出来ましたので活発な質疑応答がなされ印象的でした。
今年から学術誌も創刊され、多くの論文収載が期待されます。優秀演題には、「不妊治療施設における摂食障害」を発表されました橋本 知子 先生 ( IVFなんばクリニック ) および「生殖心理カウンセラーによりがん・生殖外来陪席: 患者、家族の状況と心理支援の可能性」を発表されました小泉 智恵 先生 ( 国立成育医療研究センター研究所 ) の2名方が選出され、森本 義晴 理事長より賞状と記念品が授与されました。大会長の閉会の辞に続きまして、次期大会長である原 利夫 先生のご挨拶で閉会となりました。大過なく無事大任を果たすことが出来ましてあらためて皆様に感謝申し上げます。
来年は六本木ヒルズでの開催となります。よろしくお願い申し上げます。
ART岡本ウーマンズクリニック 理事長
岡本 純英