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日本生殖心理学会 理事長挨拶 

ご挨拶

日本生殖心理学会 理事長 古賀 文敏この度、森本義晴理事長の後をついで、新理事長の任につきました。ご存じのように、この日本生殖心理学会は、久保春海初代理事長が世界に先駆けて生殖医療にカウンセリングの重要性を認識されて設立された日本生殖心理カウンセリング学会を前身としています。久保春海初代理事長は、我が国における創世記の生殖補助医療研究、臨床でのリーダーであり、最先端の研究に注力される一方で、治療を受けられる方への心理面へのサポートを大事にされてきました。引き継がれた森本義晴前理事長は、長年日本IVF学会理事長として日本の生殖医療を牽引されているばかりか、近年は世界体外受精学会理事長など世界的に活躍されてきました。生殖医療を技術的側面だけでなく、心理療法や栄養療法、気功など代替医療を組み合わせた統合医療を積極的に展開されており、日本生殖心理学会が社団法人になり、大きく発展していくのは必然であったかもしれません。また先生の多彩なネットワークを通して多くの会員からご協力が得られ、がん・生殖心理への拡充、学術誌の発行、資格認定制度の拡充、ESHREとのタイアップからなるサイコソーシャルガイドライン日本語版の完成など数々の業績を残されました。こうした歴史を振りかえると、改めて日本生殖心理学会理事長の責務を感じずにはいられません。


2020年に始まったコロナ渦のなか大きく社会は変わりました。世の中は、まだ非常事態宣言が何度も発令され、混沌としていますが、新しい時代に向けて少しずつ動き始めています。菅政権が掲げる不妊治療支援の一貫として、厚労省は2021年 7月に流産・死産の悲しみや喪失感を支える「グリーフケア」を拡充することを明示しました。また妊孕性温存に関して、がん・生殖医療専門心理士などの配置を求めていくことが提案されました。私たちの患者支援への活動が社会的に必要とされていることを、強く感じます。これは、本学会が生殖心理士カウンセラー、がん・生殖医療専門心理士及び生殖医療相談士を綿密なカリキュラムと指導体制で養成してきた実績と久保春海初代理事長時代から当学会に引き継がれる社会的活動・実践を重視する理念が評価されていることに他なりません。養成講座は、今年からオンラインセミナーも始まり、東京会場に頻回に来られない方にも間口が広がります。今後は資格認定が広がるだけでなく、継続的に研修が積めるようなシステムも構築すべく検討を重ねています。


現代では女性は、男女雇用機会均等法のなか男性と同じように仕事を行い、キャリアを積むことが一見可能となったように見えます。しかし、妊娠・出産・育児の場面になると、途端に個人の問題にされ、大きな壁に苦しんできました。私たちが取り組んでいる生殖の問題は、妊娠に関わるカップルだけの問題ではなく、大きな社会的課題との対応でもあります。人生100年時代を迎えるなか、卵子凍結やドナー配偶子の問題、LGBTや新しい家族形成の考えなど取り組むべきことが沢山残っています。私たちは、心理士、看護師、社会学者や生殖やがん専門の医師など多彩なバックボーンを持っています。少しでも苦しんでいる患者の救いになるよう、学問的探求と同時に社会変革をおこす一助になることも求められています。


昨年来の新型コロナウイルス感染のなかで多くの悲しみ、不安の日々のなか、私たちは本当に大切なものに気づかされました。
人は人によって救われる。
目の前のひとの心を豊かにするひと言。
言霊 ( ことだま ) を自覚しながら、改めて「人と人との繋がり、そして心の豊かさ」を共有できるような医療・社会を目指したいと思います。


皆様の本学会への積極的な関与とこれまで以上の活発な活動をお願い申し上げます。


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